私は週4千円の小遣いをもらって毎日800円の正常屋の弁当を買っている。ところが消費税が8%から10%になるからとかで850円に値上げした。持ち帰り弁当は軽減税率だろうとは言えない私は妻に小遣いの値上げを交渉した。
「正常屋の弁当を買うからいけないのよ。ギッフェン屋の500円の弁当で十分でしょ。」
付き合い始めたころ昼休みにギッフェン屋で2つ買い公園で食べた弁当の味は切なくてうまかった。今では部下も出来それなりの地位にも就いた私は、さすがに白飯と梅干だけのギッフェン屋の弁当を席で食うことは出来ず、水曜だけは公園の片隅で一人で食うことにした。
しばらくして正常屋の弁当は1000円になった。水曜と木曜がギッフェン屋の弁当になった。「価格の上昇により需要が低下する。正常屋の弁当は正常財だな。」と思った。
ウッドショックによる燃料の木材の高騰が原因だとかでギッフェン屋の弁当が700円に値上げした。かまどで炊いてるんかいと突っ込むこともできず、それ以上安い弁当屋(代替財)もないことから、火曜から金曜までがギッフェン屋の弁当になった。たまの月曜に席で正常屋の弁当を食っていると入社したての部下がいぶかしげな顔で見る。そいつの弁当は1800円の松花堂弁当。
ほどなくギッフェン屋の弁当は800円になった。月曜から金曜まで公園の片隅で食うことになった。ただ、今では独りぼっちじゃない。同世代のサラリーマンが会話もせず黙々とギッフェン屋の弁当を食っている。
「価格の上昇により需要が増加する。ギッフェン屋の弁当はギッフェン財だな。」